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トップページ > 日本お米紀行 > ~最新品種誕生ものがたり~熊本県/くまさんの輝き 極良食味米として知られる熊本県の主力品種ヒノヒカリの座も脅かす 県のフラッグシップ米として期待が寄せられる「くまさんの輝き」の実力とは?

育種担当者が三度目の正直を胸に期し、育成をすすめた熊本58号

 熊本県では、極早生は阿蘇や天草で作られるコシヒカリなどの地域限定品種、晩生は多収良食味の業務用米、そして「極良食味にこだわるなら中生で!」というすみ分けされる傾向にあるようだ。

成熟期の様子(左:くまさんの輝き、右:ヒノヒカリ)

そのため、ヒノヒカリに代る主力品種の育成は、森のくまさん→くまさんの力と中生品種で行なわれたのである。
 そして育種担当者が「今度こそ!」と3度目の正直を、胸に期して育成を進めたのが、今年プレデビューを果たしたくまさんの輝き(熊本58号)である。もちろん、育種の目標は極良食味で高品質、かつ耐暑性、耐倒伏性に優れていることにあった。
 交配がスタートしたのは、2000年のこと。早生で短稈・耐倒伏性に優れ、極良食味の南海137号(きらら397×ヒノヒカリ)が母親に、極早生で良質・良食味の中部98号(ひとめぼれ×中部69号)が父親となっている。今までの森のくまさん、くまさんの力とは違い、ヒノヒカリを交配の片親に据えてはいない。これは同じ極良食味米を目指すにしても、ヒノヒカリとは違う系統の食味で勝負したいという担当者の決意の表れかもしれない。
 しかし、育成は順調にというわけにはいかなかったようだ。
「F1、F2、F3、F4と世代を進めていきましたが、同じような特性に収束することなく、見た目も出穂期もすべてバラバラという状態が続きました。しかし、F4の個体選抜の段階で、今のくまさんの輝き(熊本58号)になった株だけが、まさに輝いていたのです」
 その当時木下研究参事は、熊本58号の育種担当ではなかったが、育成を引き継ぐにあたって、その感動を何度も前担当者から聞かされたようだ。
「とにかく草型、熟れ色などの見た目が美しかったといいます。"見た目がいい奴は品質も食味もいいはず〟という信念に支えられ、担当者は諦めることなく選抜を繰り返し、特性の固定を図っていきました」

籾と精米(左:くまさんの輝き、右:ヒノヒカリ)


 見た目の素晴らしさはある程度固定化したが、品質に関してはくまさんの力に及ばないものも多く、固定化に時間が掛かったようだ。
「私は2012年から引き継ぎましたが、くまさんの力に勝てるよい品質を一定に保つために、F16まで同じように選抜を繰り返し、気付いたら交配スタートから15年も経っていました。主食米の育成では、日本最長かもしれませんね(笑)」
 木下研究参事はそういって笑うが、通常8~10年程度に品種登録されることを考えれば、前担当者も含め、その苦労は計り知れないものだったに違いない。また固定化できないと、品種としては認められないので、途中で育成が中止されてもおかしくない状態でもあった。
「よくぞ15年もの間我慢した、開発者の気持ちも強かったが、見捨てられなかった熊本58号も、ある意味強運の持ち主だったともいえるんじゃないかな」。

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