SNSなどに食卓写真を上げる場合も注意!
「一汁三菜」の基本的な配膳の仕方とは?
日々の食生活の中で、「和食の配膳」をなんとなく行っていたという人も多いのでは? 最近は、ブログやインスタグラムなどに自分の食卓などの写真を上げる人も増えていますが、「和食の配膳」の基本を知っていなかったため、笑われるケースも。また、基本通りに並べれば、不思議と写真が見栄えよくなり、美味しそうに見えてきます。配膳に気を使えば、写真だけでなく家族の食欲アップにもつながるので、ぜひ覚えておきたいものです。
ごはん茶碗を左に、汁椀を右に
日本の伝統では「左が上位」を意味し、主食であるごはんは、汁物より上位である左に配膳されるようになったといわれています。このように和食の配膳には、いろいろな決まりごとがありますが、最終的には「食べやすさ」を追求したものになっています。日本では右利き文化のため、右手でお箸を持った際に食べやすい並べ方が基本となっているのです。
三菜は奥に
おかずとなる三菜は、主食のごはん、汁物の奥に置きます。左から副菜(煮物など)、副々菜(和え物など)、主菜の順番で並べるのが正しい配置です。
*地域によっては、三菜の配置が異なる場合があります。特別な席では、その土地柄に合わせた配膳を心がけましょう。
香の物の位置は?
漬け物などは、三菜に含まれませんので、その配膳場所に迷う人も多いようですが、基本はごはんと汁物の真ん中となっています。
お箸の位置は?
当然、取りやすいようにごはん茶碗や汁椀の手前に置きます。気をつけたいのが向き。お箸は持ち手が右側になるように置きましょう。食事中、お箸を使わない時は、箸置きに置くようにします。これは、食器の上におく渡し箸(嫌い箸*の一つ)をしないためでもあります。
*嫌い箸に関しては、別途まとめているので参照してください。
お茶は右奥に
正式な和食の席では、食事中にお茶は提供されません。でも、家庭では取りやすさ、「食卓の末席」という意味で、右奥に置くのがいいとされています。同じようにしょう油差しなども右奥が定位置です。
*主菜・副菜といって三菜をワンプレートにまとめてもOKですが、手前にごはんを左、汁物を右、そしてプレートは奥にという基本の配膳場所を守るようにしましょう。
魚の盛り付け方にもルールがあります
尾頭付きの魚をお皿に盛り付ける場合は、必ず頭を左、腹が手前になるようにします。ここにも左上位の考え方が生きています。また、切り身の場合は、皮が上、開いた魚は身を表になるように盛り付けます。切り身で左右対称でないものは、左側が大きくなるように置くのが正解です。魚の食べ方のマナーとしては、頭の方から尾に向けて食べていくのが基本。
豆知識②左上位とする日本の伝統とは?
豆知識③おもてなしの心を表わす副菜の天盛り
これだけは知っておきたい和食のマナー
人を不快にする嫌い箸はやめよう
昔からの言葉に、「箸先五分、長くて一寸(約3cm)」という言葉があるように、お箸は多くを汚さず使うことがマナー。ごはんに深々と箸を入れるといった食べ方はNG。
また、一緒に食べている人に不快な気持ちを抱かせるお箸の使い方は、「嫌い箸」とも「忌み箸」とも呼ばれています。楽しく食事をするためにも「嫌い箸」には注意しましょう。特に子どもは、ねぶり箸や迷い箸、握り箸などは行いがち。気付いたらその場で注意して、マナーを守らせるようにしてください。もちろん、大人もNGですよ。一度自分のお箸のマナーを確認してみましょう。
箸のマナー違反
家庭でも参考にしたい和食のテーブルマナー違反とは?
日本料理店などで、自分でも気づかないうちについマナー違反をしていることがあります。家の食卓だったら大目に見られることもありますが、お店では恥をかくことも。そこで、最低限のテーブルマナーを家庭でも取り入れ、マナー違反なしの食事を楽しみたいものですね。
テーブルマナー違反
和食では持ってよい器と持ってはいけない器がある
外食だけでなく、家庭で食べる時に気を付けたいのが器の扱いです。ごはん+一汁三菜の中でも、胸元まで持ち上げて食べてよい器と、NGの器があります。焼き魚、刺身、揚げ物などの主菜や、中皿(鉢)、大皿(鉢)を持ち上げるのはマナー違反。一方、ごはん茶碗、汁椀、小鉢(皿)などは、胸元まで持ち上げて食べることができます。さらにうな重やどんぶりなどもOKです。大皿料理などで食べにくい場合は、いったん取り皿に移してから、手に持って食べるように心がけましょう。
コラム
人生を変える大人のテーブルマナー
マナーっていったい何でしょう?
テーブルマナーを習いたい方に理由を聞くと、「きちんと習ったことがなくて恥をかかないか不安」とおっしゃいます。たしかに、自信がないと自分のことだけで精いっぱいとなり他への気配りはできませんよね。
でも、マナーの本筋はむしろその先にあると思います。
毎日の食べ物。私たちの口に入るまでの大勢の人の想いや労力、食器や歴史や食材や環境…、全てに感謝をする気持ち。自分以外に心を寄せるのがマナーなのです。
食欲は本能ですから、本来はガツガツ食べても不思議ではありません。ですが現代社会の日本では、本能以外の要素も求められます。
例えば皆さんも食事をともにして「素敵だな」と思う人と思えない人といるかと思います。本能だからこそ、相手の食べ方や、その人の放つ空気感や対人力を無意識に感じて、食事を通して相手の「人なり」を見てしまうからなのです。
20年近く食べ方を見つめる教室をしているのですが、生徒さんは、食べ方がキレイという理由で縁談がまとまった人や、「気配りがあり会食が和やかに進む」理由で商談がまとまったり、子供への食事教育ができてお子様の学力もアップしたり、自然に痩せたり健康になる人…。食べ方マナーで人生が好転する人が大勢! 私が驚くほどです。
生きる糧の食べ方を見つめることは、自分自身を見つめることでもあって、食べ方は生き方の鏡なのです。人生を豊かにするためにも、毎日の食への向き合い方、考えてみたいですね。
- 小倉朋子プロフィール
- 飲食店のコンサルティング、メニュー、戦略開発他、諸外国の食事マナー&総合的に食を学び広い視野で強く美しく生きる教室「食輝塾」を主宰。(株)トータルフード代表取締役、亜細亜大学講師、日本箸文化協会代表なども務める。