三度の食事をバランス良く摂るのは、少し難しいように思えるかもしれませんが、一汁三菜を基本に日々の献立を考えれば、自然と栄養バランスの摂れた食事に。また旬の食材をうまく取り入れれば、栄養価も高く、美味しさもアップします。
今回のテーマである世界の三大炊き込みごはんにおいても、一汁三菜に沿った献立が基本。しかし炊き込みごはんは、具材をごはんに入れて炊くため、おかず(主菜や副菜)を減らしても栄養を補えるというメリットがあります。
これからはごはんの美味しい季節。土鍋などの調理器具や器などをうまく配し、秋を意識した食卓の演出を楽しみながら、炊き込みごはんを堪能してみてください。
監修/調理 宗像伸子(ヘルスプランニング主宰・管理栄養士)
日本では、五目飯、五目ごはんとも呼ばれ、米と具材を一緒に炊き込んで作るごはんです。炊きたての白いお米は格別のごちそうですが、炊き込みごはんも、一緒に炊き込んだ具材の味をすべて吸い込み、ごはんが白米とは違った美味しさに仕上がるというのも魅力。
世界三大炊き込みごはんは、日本を代表する秋の風味「松茸ごはん」、スペインを代表する世界的に人気の料理「パエリア」、そしてインド料理の一つである「ビリヤニ」。それぞれ味・調理法とも秀逸であり、米食文化で培われ至高の料理として、高い評価を受けています。
秋にはぜひ食べたいのが、濃密な森の香りと得も言われぬ食感が特徴の松茸。ごはんと炊き込むと、さらに香りが引き立ちます。ただし、国産のものは価格的に高いので、コストパフォーマンスを考えるなら、似た食感を楽しめるエリンギで、代用するのも一つの選択肢です。
松茸にしろ、エリンギにしろ、単品では栄養素的には乏しくなってしまいます。そこで下記の献立のように、タンパク質などを含んだ主菜(あるいは副菜)、汁物をプラスして、栄養のバランスをとるのがベスト。献立例のように手の込んだものではなくても、これからの季節に美味しくなるサンマや鮭などの焼き魚を加えたり、野菜などの具をたくさんいれた味噌汁を添えたりすれば、バランスのよい献立になります。
また単品の炊き込みごはんだけで栄養のバランスをとりたい場合は、松茸やエリンギの香りの邪魔にならない淡白な味の食材(鶏のムネ肉やモモ肉の皮をはいだもの、白身魚のタイ、ヒラメ、生ダラ、カレイなど)を一緒に炊き込んでみるのもよいと思います。逆に旨みの濃いエビ、タコ、ホタテなどは、松茸などの香りをスポイルしかねないので、控えた方が良いでしょう。そして、お豆腐や野菜の入った汁物を添えるようにしましょう。
手間を掛けることを厭わないなら、土鍋で炊くのがお薦め。松茸の香りがさらに引き立ち、おこげの香ばしさと相まって、さらに食欲をそそります。
材料(4人分)
- 米
- 450g(3合)
- 水
- 600ml
- 松茸
- 180g
- 塩
- 小さじ1弱
- しょうゆ
- 小さじ1
- 酒
- 大さじ2
作り方
- 米は洗ってザルにあげ、水気をきって土鍋に入れ、分量の水を加えて30分以上おく。
- 松茸は石づきを削り、手早く洗ってくし形に切る。
- 1に塩、しょうゆ、酒を入れて調味し、2を加えて強火にかけ、吹きこぼれないように煮、煮立ったら火を弱めて15分炊き、火を止めて15分蒸らす。
揚げ魚とナスの炊き合わせ
材料(4人分)
- すずき
- 240g(4切れ)
- 塩
- 少々
- 酒
- 適宜
- 小麦粉
- 適宜
- ナス
- 240g(3本)
- 揚げ油(あればコメ油)
- 適宜
- ニンジン
- 80g
- サヤインゲン
- 60g
- だし
- 300ml
- 砂糖
- 大さじ1 1/3
- しょうゆ
- 大さじ1 2/3
作り方
- 魚は1切れを3つにそぎ切りにし、塩、酒をふる。
- ナスは縦半分に切り、さらに縦、横に切る。
- 揚げ油を170度に熱し、2の水気をふいて入れ、素揚げにする。次に1の魚に小麦粉を薄くまぶして揚げる。
- ニンジンはもみじ型に抜いて茹でる。
- サヤインゲンは筋をとり、茹でる。
- だし、砂糖、しょうゆを煮立て、3、4を入れて煮含め、5を加える。
- 器に彩りよく盛る。
菊花豆腐のすまし汁
エリンギはタテ半分にして薄く切ると、松茸と同じような食感を楽しむことができます。季節を問わず、松茸ごはんの雰囲気を楽しめるのもうれしい。
材料(4人分)
- 米
- 450g(3合)
- 水
- 600ml
- エリンギ
- 180g
- 塩
- 小さじ1弱
- しょうゆ
- 小さじ1
- 酒
- 大さじ2
作り方
- 米は洗ってザルにあげ、水気をきって炊飯器に入れ、分量の水を加えて30分以上おく。
- エリンギは石づきをとり、手早く洗ってタテ半分にして薄く切る。
- 1に塩、しょうゆ、酒を入れて調味し、2を加えて普通に炊く。
豚肉と野菜の炒め物
材料(4人分)
- 豚ロース肉
- 250g
- 生姜汁
- 少々
- 酒
- 大さじ1
- 白菜
- 250g
- 赤ピーマン
- 60g
- サヤインゲン
- 60g
- 油(あればコメ油)
- だし
- 200ml
- みりん
- 大さじ1 2/3
- しょうゆ
- 大さじ1 2/3
作り方
- 豚肉は食べやすい大きさに切り、生姜汁、酒をふる。
- 白菜の葉はざく切り、軸はそぎ切りにする。赤ピーマンは種をとり、薄く切る。
- サヤインゲンは筋をとり、茹でて斜めに切る。
- フライパンに油をあたため、1を入れて炒める。肉の色が変わったら2を入れて炒め、だし、みりん、しょうゆを加える。煮立ったら火を弱め、2~3分煮、3を加える。
豆腐のみそ汁
秋に美味しいお薦め炊き込みごはん
新米が美味しい季節を迎えるが、日本ならではの秋が旬の食材を使った炊き込みは、食欲をさらに増進してくれます。また、具をお米と一緒に炊き上げるだけなので、調理もカンタンです。
- ・栗ごはん
- (薄い味付けで、栗の甘さが引き立てるのがコツ。涼しくなる秋にピッタリのホッコリした定番)
- ・サツマイモとベーコンの炊き込みごはん
- (サツマイモの甘さとベーコンの塩味がごはんにマッチ)
- ・サンマの炊き込みごはん
- (焼いたサンマとお出汁で炊き上げて、秋の味覚を満喫)
- ・かやくごはん
- (ニンジン、油揚げ、ゴボウ、こんにゃく、シイタケなどで炊き上げた五目めし)
- ・キノコの炊き込みごはん
- (松茸だけがキノコではない。シイタケ、マイタケ、エノキ、シメジなどと油揚げと組み合わせて炊き上げる)
- 監修・調理/宗像伸子
- 女子栄養短期大学専攻科卒業。管理栄養士として、山王病院、半蔵門病院に長年勤務。ヘルスプランニング・ムナカタ主宰。東京家政学院大学客員教授。正しい食生活のあり方を中心に、幅広い栄養指導、講演活動を行っている。「NHKきょうの料理」「NHKきょうの健康」などテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などでも活躍。近著に『50歳からの健康ごはん』(海竜社)がある。