「これだけダイエット」が女性誌などで紹介されていますが、
先生が効果を認めるダイエットはありますか?(30代Yさん)
健康を維持するためには、単品に偏ったり、炭水化物(糖質)や脂質などの摂取制限(疾患があるケースは別)を行ったりするダイエットは、正しい方法とはいえません。このようなダイエットの多くは、体重の低下(体脂肪の低下ではない)ばかりに注目したもので、健康を無視したものがほとんど。科学的根拠(エビデンス)も希薄です。健康的にダイエットを行う場合には、バランスのよい食事摂取が基本となります。
特にリンゴ、ゆでたまご、こんにゃくなど、一品だけ集中的に食べるダイエットでは、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質、ビタミンやミネラルなどが不足しがちになり、仮に体重が減っても、骨や筋肉がやせ細ったり、疲れやすく貧血になったりの症状も。また免疫力の低下により、風邪を引きやすくなったり、やつれて髪や肌を傷める原因にもなりかねません。
炭水化物(糖質)はたくさん摂取すると、余ったエネルギーはすべて脂肪に合成されると習いました。
だから炭水化物(糖質)の摂りすぎは、ダイエットの敵なんじゃないですか?(40代Oさん)
炭水化物(糖質)を摂りすぎたからといって、それが脂肪になる(体脂肪を増やす)ことはほとんどありません。
ヒトの脳は大食漢で(摂取した総エネルギーの2割近くを消費)、しかも、通常時は糖質由来のエネルギーしか使わないという特性を持っています。それなのに、余分に摂った炭水化物(糖質)をすべて脂肪に変換したとしたら、そのエネルギーは2度と脳で使えなくなってしまいます。それを避けるため、余分に摂った炭水化物(糖質)は肝臓と筋肉のグリコーゲンとして貯蓄することで、いつでも脳や筋肉がエネルギーとして使えるよう態勢を整えているのです。
2001年に13人の女性を対象に、1日に必要なカロリーに50%を上乗せした食事(そのうち炭水化物27%、脂肪23%)を摂取してもらい、糖が脂肪に変わる割合を調べた実験でも、360?390gの炭水化物(糖質)に対して、脂肪合成は3?8gしか起きなかったという報告がされています(アメリカ臨床栄養学学会)。