人間は虫ではない。
野菜ばかりの食事はNG。
余談になりますが、医者は病気を治す専門家です。病気のことは医師に相談するのが一番ですね。では、食事についてはどうでしょう。栄養と食の専門家は栄養士・管理栄養士です。健康な人がより健康になるために食事を相談するなら、栄養士さんにまずみてもらいましょう。何が足りていなくて、何が多すぎるのか?を、栄養の専門家である栄養士さんに相談するのが、食事の改善の近道です。
「肉や油も控えめにして、野菜中心の食生活をしているのに、やせません」という相談を受けることが、最近多くなってきました。「野菜中心」というと、いかにも健康的なイメージですが、実は、これも行き過ぎるとやせにくくなる原因の一つ。
人間は虫でも、草食動物でもありません。人の身体に必要な三大栄養素はたんぱく質、脂質、糖質(炭水化物)です。この三大栄養素を効率良く摂るためには、主食のごはんに一汁(汁物1品)三菜(主菜1品に副菜2品)という基本的な和食は、理想的なスタイルといえます。そして、野菜はあくまでも、副菜の一つに過ぎないことを頭に入れておきましょう。
確かにビタミンやミネラルを含む野菜を摂ることは大事ですが、それだけでお腹をいっぱいにすることは考えもの(ベジタリアンのように野菜中心の食生活で、健康を維持できる人を除いて)。野菜を中心に摂ることで、肉や魚の量が減り、動物性たんぱく質不足に陥りかねないからです。
最近、お寿司屋さんにいくと、野菜がネタの寿司ばかりを注文している女性の姿を見かけることがあります。しかも、シャリは小シャリでと……。なんと、もったいないことをしているのだろうと思います。魚介がネタのお寿司は、世界に誇れる美容食であり、ダイエット食。良質な動物性たんぱく質や脂質を生で摂れ、しかもおしょうゆをつけて、パクッと口に入れるだけで、最高の口内調味が楽しめます。また、シャリの冷えた酢めしは、植物性たんぱく質を摂れるだけでなく、酢を一緒に摂ることで、血糖値の急上昇を抑えられます。ごはんは冷やすことで、でんぷんの一部がレジスタントスターチという食物繊維に似た成分に変わり、腸内環境の改善に役立ち、代謝が大幅にアップさせるなどの効果が期待できるのです。
それなのに、小シャリでたんぱく質ゼロの野菜の寿司……ほんと、「虫じゃないんだから」といいたい気分になります。
そしてたんぱく質不足だと、「代謝が落ちる」「元気がでない」など、何らかの不調があらわれてくることもあります。
また野菜というと、サラダを思い浮かべる人が多いようですが、漬物やおひたしも野菜を摂れる立派な副菜ですし、味噌汁の具からも野菜は摂れます。それでも漬物や味噌汁は塩分が多く血圧が高くなると敬遠する人もいるのも確か。しかし塩分過多は、カリウム不足によって塩分の排泄がうまくできないために起こる場合もあるのです。その点、ぬか漬けにはカリウムが多く含まれていますし、味噌の塩分は血圧を上げないことがわかっています。
ともかく、まずは三大栄養素を優先して摂り、そこにビタミン、ミネラル、食物繊維をプラスする食生活を心がけることが大事になってくるのです。
主食には何がいいか?
迷わず「ごはん」といえる理由
「食生活の中心となる主食には、何を選んだらいいか?」という質問も良く受けますが、私は迷わず「ごはん」と答えています。
小麦自体は、炭水化物のほかに、ビタミンB群やミネラル、食物繊維などを豊富に含む食材。しかしパンやパスタ、うどんなどの小麦製品は、小麦の原形や色が分からなくなるほど生成された小麦粉が原料になっており、精製の過程でビタミンや食物繊維などの栄養素がほとんどそぎ落とされてしまっています。また、小麦製品は小麦粉に油や糖分などが混ぜられるため体内で分解しづらく、残った成分が腸壁に溜まることで栄養の消化吸収を妨げ、代謝が下がりやせにくくなることも。
その点ごはんは、脂質が比較的少なく、消化もよく栄養を吸収しやすい食品。また精米された状態でも、植物性たんぱく質やカルシウム、マグネシウムなども含んでおり、栄養価が高い食品といえるのです。
また主食をごはんにすると、どんぶり物(+味噌汁+漬物)や一汁三菜の定食という組み合わせになるので、三大栄養素を摂りやすいというメリットもあります。
実は現代人は、朝のサンドイッチ(野菜サンドイッチなど)や昼のパスタランチ(+サラダ)などに代表されるように、主食と副菜は摂っているが、汁物や主菜を摂っていないというパターンが多いのです。特にたんぱく質の不足が目立ちます。その点ごはんを主食にすれば、必ず肉や魚などの主菜がつくのでたんぱく質不足に陥ることも少ないのです。