6月30日は「夏越(なごし)ごはんの日」。2015年より新しい記念日として加わった「夏越ごはんの日」は、古来より全国の神社で行なわれてきた「夏越の祓(はらえ)」の神事に合わせ、米穀安定供給確保支援機構という組織で提唱されたもの。
夏越ごはんは、茅の輪(ちのわ)の由来になった、蘇民将来(そみんしょうらい)が素盞嗚尊(すさのおのみこと)を「粟飯」でもてなしたという伝承にならった「粟」、邪気を祓う「豆」などが入った雑穀や五穀、小豆などが入ったごはんがベース。そこに、邪気を祓うといわれる赤や緑の旬の夏野菜を使った茅の輪をイメージした丸いかき揚げをのせ、百邪を防ぐといわれる旬のショウガを効かせたおろしだれをかけたごはんものになっています。
ごはん彩々では、この茅の輪のイメージ、夏野菜、雑穀や小豆をキーワードに、体力が失われがちな暑い夏を乗り切るための、栄養価が高く、見て楽しい、食べて美味しい夏ごはんメニューを提案します。
総エネルギー(1人分) 705kcal
ビタミンCの多いゴーヤ(にがうり)や赤ピーマンのかき揚げに、さっぱりダイコン卸しを添えた夏越ごはん。副菜には夏が旬の野菜の酢の物を添えて、栄養のバランスを計るようにしました。かき揚げにはあっさりしたおかずが合います。これを食べて暑さに負けない体力作りを。
夏越ごはん
材料(4人分)
- ●米
- 300g(2合)
- ●雑穀米
- 30g
- ●水(炊飯用)
- 480ml
- エビ(正味)
- 80g
- タマネギ
- 120g
- ゴーヤ
- 120g
- 赤ピーマン
- 60g
- 天ぷら粉
- 80g
- 水
- 3/5カップ(120ml)
- 揚げ油(あれば米油)
- 適宜
- ダイコン
- 150g
- ショウガ
- 1かけ
- レモン汁
- 大さじ1
- ●しょうゆ
- 大さじ2
- ●みりん
- 大さじ2
- ●だし
- 3/5カップ(120ml)
サイドメニュー
- ●キュウリとミョウガの酢の物
- ●白玉団子のすまし汁
<作り方>
- 米は水洗いし、分量の水を入れて30分以上つける。雑穀米を加えて炊飯器で普通に炊く。
- エビは殻をむいて背ワタを除き、1cmくらいに切る。タマネギは薄切り、ゴーヤ、赤ピーマンは種やワタを除いて薄切りにする。
- 天ぷら粉、水を合わせて衣を作り、2を入れてさっくりと混ぜ合わせる。
- 揚げ油を170度に熱し、3を丸く形作りながら揚げる。カラリと揚がったら油をよく切る。
- しょうゆ、みりん、だしを合わせて煮立て、天つゆを作る。大根はすり卸し、水気を軽く切り、レモン汁を加える。
- 器に1のご飯を盛り、4をのせ、5のダイコン卸し、卸しショウガを添え、天つゆをかける。
かき揚げを作る際には、かき揚げリングなどを使えば、丸くカッコよく仕上がります。
「夏越の祓」自体は、一年の前半の最終日にあたる6月の晦日に行なわれる大祓の神事。これは、一年の最後、12月の大晦日に行なわれる「年越の祓」と対になる行事で、心身を清めて年の後半や新しい年を迎えるためのもの。「夏越の祓」は年越し行事のような派手さはありませんが、古来より日本に根づいてきた、大切な節目の行事なのです。
神社では、鳥居の下や拝殿の前などに茅や藁で作った大きな輪を設け、宮司に続き参拝者がくぐる「茅の輪くぐり」が行われます。茅の輪を「水無月の夏越の祓する人は千歳の命のぶというなり」と唱えながら8の字を描くように3度くぐり抜けます。これによって、日々の暮らしの中で犯したで過ち、心身の穢れを祓い清め、病気や災いを逃れることができるとされています。
また、人の形に模した紙の形代(かたしろ)に、自分の名前、年齢を書き、それで体をなでて人形(ひとがた)に罪や穢れを移し、神社に奉納。神社では、それを川に流したり、篝火を焚いて燃したりし、厄を落す夏越祓の方法もあります。
「夏越の祓」にちなんで、京都でよく食べられてきたものにウイロウ生地に小豆をのせ、三角形にカットした「水無月」という和菓子があります。また、奈良では夏越の祓の時期には、赤米で炊いた茶粥に小豆を入れてもてなすところもあるようです。小豆は邪気を払い、一年を息災に過ごすために、小正月に小豆粥を食べる習慣なども残っています。
監修/宗像伸子
女子栄養短期大学専攻科卒業。管理栄養士として、山王病院、半蔵門病院に長年勤務。ヘルスプランニング・ムナカタ主宰。東京家政学院大学客員教授。正しい食生活のあり方を中心に、幅広い栄養指導、講演活動を行っている。「NHKきょうの料理」「NHKきょうの健康」などテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などでも活躍。近著に『50歳からの健康ごはん』(海竜社)がある。