惜敗続きで終わったソチオリンピックで、
浮き彫りになった3つのポイント
スマイルジャパンにとって2014年のソチオリンピックは、1998年の長野オリンピック以来、4大会ぶりの出場。2012年の世界選手権終了時の日本のIIHF(国際アイスホッケー連盟)ランキングは11位だったにも関わらず、最終予選で7位のスロバキア、10位のノルウェーを抑えて、出場権を手にした。
そして、チームには"スマイルジャパン〟という愛称がつけられ、本番での活躍が期待された。ソチで代表としてプレイをした足立選手、中村選手、そして残念ながら、ソチでは代表から漏れてしまった岩原選手は、当時を次のように振り返っている。
足立:ソチの時は、オリンピック出場がやっとの状態で、出場権を得られたことに喜びを感じていました。出られたことに満足してしまったのかもしれませんね……。実際の試合では、あと一歩で勝てない試合が続き、自分の不甲斐なさに悔しささえ感じました。引退という考えも頭をよぎりましたが、「あと一歩」という悔しさがあったからこそ、これまでやってこられたのだと思っています。
中村:自分たちは努力を積んで、ソチのリンクに立っている。だから「私たちは強いはずだ」と思っていました。しかし、実際に対戦してみると、世界のトップはそれ以上に強かったですね。だからこそ、次の機会には、その人たちに勝ちたいと強く思いました。
岩原:私はソチでは代表メンバー落ちを経験しました。代表落ちの悔しさを振り払うため、この3年間やってきたので、それを平昌のリンクでぶつけたいと思っています。
ソチオリンピックでのスマイルジャパンの結果
【予選リーグBグループ】
スウェーデン 1-0 日本
ロシア 2-1 日本
日本 0-4 ドイツ
【順位決定ラウンド】
ロシア 6-3 日本
【順位決定戦(7-8位決定戦)】
日本 2-3 ドイツ
ソチでは期待されながらも、思い通りの結果を残せなかったスマイルジャパン。3選手それぞれが悔しさを胸に抱き、2018年の平昌オリンピックを目指すことに。
しかし、平昌オリンピックの出場権を獲得し、1試合も勝てなかったソチの雪辱を晴らすためには、どうしても克服しなければならない次の3つが浮き彫りになってきたのである。
フィジカルの強化
ソチで戦ったスマイルジャパンの平均身長は162㎝、平均体重は59kg。他の7出場国のそれぞれ平均が169㎝、67kgと、明らかな体格差があった(ちなみにフランスには身長2mの選手もいる)。体格差を埋めるには身体能力を上げなければならない。しかし、身体能力を表わす懸垂や垂直跳びなどの数値においても、世界のトップに君臨するアメリカ選手たちと比べ、スマイルジャパンのメンバーは明らかに劣っていたのである。当時は中村選手をはじめ、何人かは懸垂を1回もできない状態だった。
メンタルの強化
試合で負けている時、身体が動かなくなってくると、声を出すものがいなくなり、チーム内がシーンとしてしまい、士気が落ちる傾向にあった。
厳しい生活環境
専用の練習場がないため、時間や場所などの問題から、氷上の練習はいつも夜間の限られた時間のみ。また、オリンピック出場が決まるまでは、学生など一部のメンバーを除いてはアルバイトで生計を立てる日々が続いた。
コラム1
アイスホッケーとは?
天然または人工氷のスケートリンクで専用のスケート靴を履いて行うスポーツ。扁平な円柱状の硬質ゴムでできた「パック」を「スティック」(長い柄の先端部分に角度をつけ湾曲させた杖状の用具)を使い、相手ゴールに入れて得点を競い合う。試合は1ピリオド20分の3ピリオド制(インターバル15分)。ベンチに入れるメンバーは、国際ルール上では1チーム22名だが、一度に氷上に上れるプレーヤーは6名。一般的には、ゴールキーパー1名、守備担当のディフェンス2名、攻撃担当のフォワード3名で構成されるが、すべてフォワードでも構わない。激しい運動のため、何回でも選手を入れ替えることが可能。また、アイスホッケーはゴールの裏側でもプレイが可能で、他の競技にはない大きな特徴となっている。詳しくルールを知りたい方は、日本アイスホッケー連盟の「ルールの説明(初心者向)」でチェックを。
https://www.jihf.or.jp/rule/rule1.php