練習環境の改善、
プライベートの充実は食生活にも良い影響が!
練習終わりの晩ごはんは、コンビニのおむすびというのが定番だった選手が多かったが、企業に正社員とした就職できたことで生活が安定し、また極端に遅い夜間の練習時間が少なくなったことで、それまでないがしろにされがちだった食生活を見直す選手も多く出てきた。また足立選手に関しては、2015年5月の結婚が大きな食生活改善の転機になった。
足立:食の面は大きく変わりました。彼が「白い温かいごはんをたべないと……」といって、練習から帰宅した私のために、食事を用意してくれています。食生活が変わったことで、練習の質が上がったことが実感できます。
そして、時間があれば、足立選手自らもキッチンに立ち食事を作ることも多くなったという。
足立:携帯でクックパットのレシピを見ながら作っていますが、彼はなんでも「美味しい」といって食べてくれます。
中村:ワー、おのろけですか(笑)。
そういう中村選手も、食生活は外食より自炊が中心なので、キッチンに立つことが多い。
中村:私の場合は、自分のためだけの料理ですから、どうしても簡単に作れる丼物が多くなってしまいますね。あと、朝もごはん派なので、好きな納豆ごはんなどで済ますことも多いかな。
岩原:アミの作った親子丼は美味しいよ。アミの料理は、プレイスタイルに似てエネルギッシュなのが特徴です(笑)。
実家で暮らす岩原選手もキッチンに立ち、料理を作るが、そのほとんどがお父さんのお弁当だというから驚きだ。しかしそれには、家族が岩原選手を支えていた一つのエピソードが隠されていたのである。
岩原:父は出張が多いので、会社に行くときお弁当が必要かどうか、リクエストを聞いて作ります。食材は家にあるものを使いますが、私の愛情をいっぱい入れて……。そして、500円也の手間賃をいただいています。
実はこのお弁当。岩原選手が今の企業に就職する前のバイト時代、遠征などでバイトを休んだ時の生活の足しにと始められたもの。まさに家族の愛情弁当なのだ。
多くの人たちに支えられた3選手。
そして目指すはオリンピックでのメダル!
岩原家のお弁当ではないが、家族を含め多くの人に支えられたことで、スマイルジャパンは、平昌オリンピックの出場権を手にしたといっても過言ではない。中村選手は尊敬する人に「両親」をあげているが、足立選手と岩原選手は、所属チームの先輩であり、コーチを務める近藤陽子さんの名前を挙げている。
足立:近藤さんは私がオリンピックを目指したきっかけになった先輩で、ラビッツの中では唯一、長野オリンピックの経験者でした。私は、バンクーバーオリンピックの予選で敗退した時、現役を続けるかどうか、真剣に悩んでいたのですが、「あの舞台に立ったら絶対に戻りたくなる場所だよ。」と熱く語っていただいたことが、今の私につながっているのだと思います。
そして岩原選手は、他に40歳を過ぎても一線で活躍するテニスプレイヤーの伊達公子さんとサッカーの日本代表キャプテンである長谷部誠選手の名前を挙げている。
岩原:私は、最終予選後のアジア大会で相手選手が打ったパックを指に受け複雑骨折をしてしまいました。リハビリのために、JISS(国立スポーツ科学センター)でトレーニングを行っていたんですが、そこで長谷部選手にお会いしました。声をかけていただき、一緒にトレーニングしましたが、彼の努力を惜しまない姿勢に感動し、「私も!」と刺激を受けました。私の好きな言葉「努力は裏切らない」ですが、長谷部選手はまさにその言葉を実践していました。そんな私のオリンピックに向けての目標は、ケガをしたことでレベルを下げることなく、ケガをプラスにして、レベルアップを図っていくことにあります。具体的には、スピードとフィジカルをさらに磨き、外国人にはない素早い動きで、チームに貢献したいと思っています。
足立:私の好きな言葉は「全力」。練習でも仕事でも、一つひとつ全力で取り組むことで、どれだけ質を挙げ、レベルアップできるかが、自分に問われている気がします。オリンピックの試合では、守りに信頼を得ているので失点ゼロに抑えたいし、攻めでも貢献し、得点に絡めるようにすることを目標においています。そのためにも、常に「全力」を出し切ることが大事なのです。
中村:スマイルジャパンとしては、得点力不足が課題なので、得意なゴール前のバトルで負けないようにして、スクリーンプレイで味方の得点力を上げられるようにしていくのが、私の当面の目標です。そして、平昌では私の好きな言葉「笑顔」でいられるよう、勝負にこだわりたいと思っています。
足立:私たちには、ソチオリンピックでは経験したそれぞれの悔しさが、どこかに残っているのかもしれません。それを払拭するためにも、平昌オリンピックでは結果を出すことが必要。なので、スマイルジャパンは、グループリーグ通過だけでなく、メダルを目指したいと思っています。
彼女たちはインタビューの終わりに、平昌オリンピックでメダルを獲得し、メダルを胸に「ごはん彩々」にできれば再登場したいと語っている。そんな彼女たちが、平昌オリンピックの会場のリンクで活躍している姿が脳裏に浮かび、思わずワクワクしてきた。ごはんパワーで培われた日本女性の力を、ぜひ世界に見せつけてほしいものである。
コラム3
平昌オリンピック女子アイスホッケー出場国
スマイルジャパンがメダルをとるための条件とは?
女子アイスホッケーがオリンピックの正式種目になったのは、1998年長野冬季オリンピックから。平昌で5回目と、オリンピックの歴史的にはまだまだ浅い競技。平昌オリンンピックへは8か国が出場する。この8か国の内、2016年のIIHF(国際アイスホッケー連盟)ランキングに基づく上位5か国、および開催国(韓国)は予選が免除。残り2の出場枠を巡り、2グループに分かれた最終予選(グループ首位のみ出場権)が行われ、日本は見事に出場権を獲得したのだ。
オリンピックでは、この出場国が2つのグループに分かれ、総当たりの予選ラウンドを戦う。グループAはランキング上位4か国(アメリカ、カナダ、フィンランド、ロシア)、グループBはランキング5位のスウェーデン、最終予選を勝ち抜いたスイス(ランキング6位)、日本(ランキング7位)、そして韓国に分けられる。
そして、グループBの上位2チームと、グループAの下位2チームが準々決勝を戦い、勝ち残ったチームが準決勝に進出し、グループAの上位2チームと戦い、勝ち上がれば決勝に。日本がメダルをとるためには、グループBの2位以内に入ることが絶対条件になり、準々決勝以降はランキング上位国を2か国撃破しなくてはならないのだ。
写真提供:日本アイスホッケー連盟
取材協力:ダイドードリンコアイスアリーナ