稲作(米作り)において、害虫は天敵の一つ。人間にとって美味しいお米は、害虫にとっても栄養たっぷりで美味しいお米なのです。そこで、今回は稲作で注意すべき害虫について、被害の内容や農家が行っている対策についてご紹介します。家庭でお米を保管するときに発生しやすい害虫との違いについてもぜひ知っておきましょう。
ひどいときは田んぼを全滅させることもあり、江戸時代には享保・天保の大飢饉を引き起こしたともされる、稲作の大敵です。
※イネの葉鞘とは…葉の根元が鞘状になり、茎を包むように育った部分のこと。
お米に生じる黒い斑点については、こちらの記事も参考にしてください。
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お米の保管時に発生する害虫については、こちらの記事も参考にしてください。
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一方、ヒメトビウンカは幼虫のまま冬越しできるので、イネの植え付け直後(5〜6月)にも食害が出ます。このため、日本国内ではこのヒメトビウンカの被害が最も多いとされています。また、葉を好むイナゴやイネドロオイムシなどは植え付けの5〜6月ごろから発生するので、これも注意が必要です。
※忌避剤とは…鳥などの害を及ぼす生き物が作物に近づかないよう用いる薬剤のこと。
殺虫剤などの農薬を使わない水稲栽培では、害虫に対して天敵となり、かつ、イネを食べることのない益虫(クモ、トンボ、ハチなど)を放つことで、イネを守る工夫をしているところもあります。
※殺虫剤など農薬については、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
「米作りに使われる農薬にはどんなものがある?正しく使えば安全って本当?」
稲作で注意すべき害虫の種類
まずは、稲作で注意すべき害虫の種類を6つ見ていきましょう。
ウンカ・ヨコバイの仲間:セジロウンカ、トビイロウンカ、ツマグロヨコバイ
ウンカやヨコバイの仲間は、イネの葉や茎から汁を吸って枯らし、その際にウイルス病なども広めてしまいます。このため、被害が単純な食害だけにとどまらず、最も厄介な害虫と言えるでしょう。繁殖力が強いので、田んぼの一部に穴を開けるほどイネを枯らしてしまうこともあります。ひどいときは田んぼを全滅させることもあり、江戸時代には享保・天保の大飢饉を引き起こしたともされる、稲作の大敵です。
バッタの仲間:コバネイナゴ
イナゴは昔から農家が悩まされてきた、稲作最大・最強の天敵と言っても過言ではない害虫です。幼虫が植え付け直後の苗を、成虫がイネの葉を食べてしまう「食害」が主な被害で、ウイルスなどの病気は媒介しません。しかし、大きい上に大量発生しやすいので、食害であっても被害が大きくなりやすいのが難点です。
ガの仲間:ニカメイガ、コブノメイガ、アワヨトウ
ガの仲間は、幼虫がイネの葉鞘(ようしょう)や茎の内部に入って中身を食べてしまうので、芯が枯れたり、褐色に変わって育たなくなったりしてしまいます。特に稲作での被害が多い「ニカメイガ」は、1年に2回発生するので「ニカメイガ」の名前がつきました。※イネの葉鞘とは…葉の根元が鞘状になり、茎を包むように育った部分のこと。
カメムシの仲間:アカヒゲホソミドリカスミカメ、オオトゲシラホソカメムシ
カメムシ類は、イネの葉や茎のほか穂から汁を吸い、お米を斑点米という黒い点がついたものにしてしまいます。斑点米は食べても人間に害があるものではありませんが、品質を落としてしまうため、農家にとっては頭の痛い問題です。お米に生じる黒い斑点については、こちらの記事も参考にしてください。
「お米の黒いところは何?黒くなっているお米を食べても大丈夫なの?」
ハムシの仲間:イネクビホソハムシ(イネドロオイムシ)
ハムシの仲間は、成虫・幼虫ともにイネの葉を食べてしまいます。葉を食べられたイネは、穂が短くなったり粒の数が減ったり、実りが悪くなったり、質が落ちたりとさまざまな問題が生じます。
ゾウムシの仲間:イネミズゾウムシ
ゾウムシの仲間は、幼虫は土の中でイネの根を食べ、成虫は地上で葉を食べる性質があります。被害を受けた葉はやがて短冊状に裂けてしまい、イネの生育に悪影響を及ぼします。
お米の保管時に発生する害虫とはどう違う?
お米の保管時に発生する害虫は、主にコクゾウムシやノシメマダラメイガなど米粒を狙うもの。イナゴやウンカ、ハムシなど葉・茎を食べる害虫は、種の部分だけとなった保管中には発生しにくいです。お米の保管時に発生する害虫については、こちらの記事も参考にしてください。
「お米に虫がわくのはなぜ?虫の種類や原因、対処法を知っておこう」
米作りで害虫に注意しなくてはならない時期は?
米作りにおいて、害虫に注意しなくてはならない時期が2つあります。成長途中の時期と、実りの時期です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
種まきから80日目が一つの目安
イネが60cm近くまで伸びてくると、イネを食べにくる害虫も増える時期です。特に、毎年6〜7月頃に梅雨前線の気流に乗ってアジア大陸からやってくる「ウンカ(セジロウンカ、トビイロウンカ)」に注意が必要です。ただし、これらは寒さに弱いので日本の冬は越せず、いったん死滅します。一方、ヒメトビウンカは幼虫のまま冬越しできるので、イネの植え付け直後(5〜6月)にも食害が出ます。このため、日本国内ではこのヒメトビウンカの被害が最も多いとされています。また、葉を好むイナゴやイネドロオイムシなどは植え付けの5〜6月ごろから発生するので、これも注意が必要です。
実りの時期にも要注意
イネが十分に育って実りの時期を迎える8〜9月は、養分がたっぷり詰まった米粒がたくさんあります。当然、これを狙ってくる虫も多いということです。この時期には、セジロウンカ、カメムシ類などに特に注意しなくてはなりません。
稲作の害虫対策はどんなことをしているの?
害虫の防除には、殺虫剤を使うのが一般的です。一方、鳥害には忌避剤(きひざい)を使います。近年では、ある種の農薬に抵抗性を持ったウンカなどの害虫が発生しているため、農薬の種類を考慮する必要も出てきました。※忌避剤とは…鳥などの害を及ぼす生き物が作物に近づかないよう用いる薬剤のこと。
殺虫剤などの農薬を使わない水稲栽培では、害虫に対して天敵となり、かつ、イネを食べることのない益虫(クモ、トンボ、ハチなど)を放つことで、イネを守る工夫をしているところもあります。
※殺虫剤など農薬については、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
「米作りに使われる農薬にはどんなものがある?正しく使えば安全って本当?」
まとめ
稲作でもさまざまな作物と同様、苗の時期から収穫の時期まで絶えず害虫との戦いです。主な害虫にはウンカ・イナゴのほか、ガ・カメムシ・ハムシ・ゾウムシなどがいます。一般的には殺虫剤を使って害虫対策を行うことが多いですが、無農薬栽培では、天敵となる益虫を放って害虫対策するところもあります。
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