稲は寒さに弱い作物で、もともと日本より南の地域で生まれました。実際に、最初に日本に伝わったのは九州からだったとする説が有力です。そんなお米がなぜ、日本の中でも寒い東北地方で作られるようになったのでしょうか。この記事では、米作りに適した条件と、その条件から東北地方で米作りが盛んな理由について解説します。

米作りの条件とは?
美味しいお米を作るためには、気候や水質・土質など自然環境が重要です。そこで、まずは美味しいお米を作るための条件を確認しましょう。

米作りの条件①:気候(寒暖差)
稲はイネ科の一年草で、以下の条件で美味しく育つことがわかっています。

・田植えの後、苗が成長して枝分かれが終わるまで高温多湿
・花が咲いた後は日射量が多い

これは、デンプンがより活発に作られ、粒が大きく品質の良いお米が作れるためです。高温多湿の環境でよく育ち、たっぷりの光合成でデンプンを作ります。春と夏の間に梅雨という高温多湿の時期があり、その後に夏が来る日本の気象リズムにぴったりの作物だと言えるでしょう。

また、同じようにデンプンが多く作られる条件として、昼夜の寒暖差が挙げられます。昼の光合成ではしっかりデンプンを作りますが、夜が寒いほどそのデンプンが消費されにくいため、米粒の中にデンプンが多く残ります。寒暖差が大きいと、植物自身が自分を守ろうとよりデンプンを作る性質もあります。

特に、7月中旬〜9月中旬(出穂時期)にかけての時期に昼夜の寒暖差が激しいと、穂の中で育つお米の粒にデンプンがしっかり蓄積されやすい性質があります。粘りがあってもちもちした食感、甘みのあるお米を育てやすいのです。

米作りの条件②:水
日本で主食として食べられる「うるち米」は、水田で育てる「水稲」の一種です。田んぼに水を溜めて育てるため、米作りにはキレイな水が重要です。 この点、日本は山脈が多くキレイな水が確保しやすいという大きなメリットがあります。特に、微量元素であるミネラル分は水から吸収するため、ミネラルを豊富に含む水が適しています。

米作りの条件③:土
米作りは土作りから、とも言われるように、多くの作物と同様、土は非常に重要です。春頃に肥料、燻炭(くんたん)などを混ぜながら「床土作り」を行います。
※燻炭(くんたん):もみがらや木屑を蒸し焼きにして炭にしたもの。穴がたくさん空いているため通気性が良く、土壌改良剤として使われる。

床土作りのポイントは、以下の2つです。

・土壌酸度はpH4.5〜5.5(酸性):pHが高くなると生育不良になったり、病気にかかりやすくなったりする。pHが低すぎると背丈ばかり育って収量が少なくなりやすい
・元肥として重要な三大肥料、窒素・リン酸・カリウムはこのときに混ぜておく

一方、生育調整には水田から水を抜いたり、また入れたりする必要があるため、水はけの良さにも注意します。逆に、水はけが良すぎたら粘土質の土を加えるなど、ある程度は水分を保つことも考えながら土作りを行います。生育状況に応じて、追肥を施すのも大切な工夫の一つです。

米作りの条件④:土地
水田には水を張るので、広くかつ平らな土地が必要です。米作りに有名な地域がたいてい平野であることからも、これは想像しやすいでしょう。さらに、田んぼの隅々まで水を引くため、川など水を得やすい場所の近くであることも重要です。

東北地方で米作りが盛んな3つの理由
では、上記の理由からなぜ東北地方で米作りが盛んなのか見ていきましょう。

寒暖差の大きい気候
東北地方では、米作りを行う5〜10月ごろの昼夜の寒暖差が大きいです。特に、フェーン現象により夏場の日中の気温が高くなりやすいので、夜間との寒暖差が生まれやすいという特徴があります。お米に蓄えられるデンプンの量が増えるので、甘くもちもちとした粘り気のあるお米が育ちやすいのです。

さらに、冬の寒さで害虫や雑草がなくなり、病気にもかかりにくく、稲が育つために敵となる要素が少ないメリットもあります。

大量で清浄な雪解け水
東北地方には大量の雪が降り、山間部から流れ出る水は清浄でミネラル分が多いという特徴があります。米作りに必要な水の条件を両方しっかり備えているのが、東北地方の水なのです。

豊富な土地と肥沃な大地
東北地方は工業地帯などが少なく、広い平野を確保しやすかったことに加えて、豊かな山々と川が作る肥沃な大地を持っています。つまり、水田づくりに必要な広さも、土の性質も揃っていると言えるでしょう。

このように、東北地方には美味しいお米が育つための条件がたっぷり揃っているため、米作りが大きく発展してきたのです。

まとめ
米作りには気候・水・土・土地の4条件が必要です。特に寒暖差のある環境では、お米がデンプンを蓄えてより粒が大きく、甘くもっちりとした食感に育ちます。東北地方ではこの昼夜の寒暖差に加え、冷涼な気候で病害虫を防げるほか、清浄な雪解け水、豊富な土地、肥沃な大地と米作りに適した環境が揃っています。ぜひ、その風味を味わってみてくださいね。
(おいしいごはん研究チーム)
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