ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富な玄米が注目されています。一方で、白米と比べると「炊くのが難しい」「おいしくない」というイメージがあるようです。今回は、玄米と白米の違いや、玄米を食べるメリットとデメリット、美味しく炊く方法について詳しく解説します。
玄米とは、どのようなお米のことを指すのでしょうか。玄米と白米、そして分づき米の違いについて説明します。
田んぼに植えられた稲が成長すると、穂には種子が実ります。これが籾(もみ)です。収穫の時期を迎えると、稲刈りが行われ、脱穀によって稲穂から籾が外されます。この籾を乾燥させてから籾摺り(もみすり)して、籾殻(もみがら)が取り除かれたものが「玄米」です。
「白米(精白米)」とは、玄米を精米して胚芽とぬか層を取り除いたものです。胚芽やぬか層を一定程度残して精米したお米を「分づき米」といいます。3分づきや5分づき、7分づきと数字が大きくなるほど白米に近くなります。
精米する際に玄米から取り除かれる胚芽やぬか層には、ビタミンやミネラル類といった栄養素が含まれていますが、玄米は精白米に比べて消化しにくい、消化に負担がかかるなどの傾向にあります。
玄米と白米の主な栄養素を比較すると、以下のようになります。
栄養素 |
玄米 |
白米 |
ビタミンB1(mg) |
0.16 |
0.02 |
ビタミンB6(mg) |
0.21 |
0.02 |
葉酸(μg) |
10 |
3 |
マグネシウム(mg) |
49 |
7 |
カリウム(mg) |
95 |
29 |
マンガン(mg) |
1.04 |
0.35 |
リン(mg) |
130 |
34 |
*可食部100g当たり
胚芽やぬか層が残されている玄米は、栄養豊富でさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
前章で紹介した通り、玄米にはビタミンやミネラル、食物繊維が豊富に含まれています。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖質からエネルギーを作りだす際に必要なビタミンです。玄米ごはん100gあたり0.16mg含まれていて、これは白米のごはんのおよそ8倍にあたります。ビタミンB1が不足すると、精神障害、疲労感、倦怠感、記憶力の低下などの症状につながるリスクがある。
ビタミンB6
ビタミンB6は、タンパク質の元となるアミノ酸の代謝を助けている栄養素です。玄米ごはん100gあたりには、白米ごはんの10倍以上の0.21mg含まれています。ビタミンB6が不足すると、口内炎や皮膚炎、 貧血、食欲不振、免疫力低下などが起こる可能性があります。
マグネシウム
マグネシウムは、骨の形成に関わるほか、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持ったミネラルです。玄米ごはん100gあたりに49mg含まれています。これは白米ごはんのおよそ7倍です。マグネシウムが不足すると、骨の形成に影響があるほか、不整脈や高血圧、動脈硬化などのリスクが高まります。
カリウム
カリウムは、ナトリウムを体外に排出する働きがあるため、塩分の摂り過ぎを調節する上で重要なミネラルです。マンガンは血液の生成や消化補助、酵素の活性化など、体内でさまざまな働きをしています。どちらも体に必要なミネラルで、白米ごはんより玄米ごはんに多く含まれています。
玄米を食べるデメリットには、次のような点があげられます。
食べにくい・おいしくない
一般的な玄米は、表面が防水性のある「ロウ層」で覆われています。これにより、ごはんがしっかりと煮あがらず、ボソボソとした食感になるため、食べにくい、おいしくないと感じる方がいます。
消化に悪い
白米と比べて吸水しにくい玄米を炊飯するときには、しっかりと浸水させる必要があります。浸水が不十分だと、炊き上がりが硬くなってしまいます。これが消化に悪いと言われるひとつの原因なのです。
また、玄米には食物繊維が豊富に含まれています。食物繊維には、腸内環境を整える働きがあります。しかし、消化されずに大腸まで届くため、摂りすぎるとお腹の調子が悪くなることがあります。胃腸の弱い方は、よく噛んで食べることを意識して、食べ過ぎには注意しましょう。
残留農薬が心配
お米の残留農薬は、精米することで8割以上取り除くことができるといわれています。つまり、精米していない玄米には、農薬が残っている可能性があるということです。しかしながら、食品衛生法の基準を超えて農薬が残留しているケースはありません。それでも心配な場合は、農薬や化学肥料の使用回数が少ない「特別栽培米」・「JAS有機」などの玄米を選ぶと良いでしょう。
玄米をおいしく炊くには、しっかりと浸水させてお米の中心部まで水分を吸わせる必要があります。
計量した玄米を、ざるやボウルに入れて洗います。水を入れたら素早くかき混ぜて、表面のゴミや汚れを落とし、水を捨てます。再度水を入れて、両手ですくい上げてこするように洗います。こすり洗いすることで、玄米の表面にあるロウ層に傷がついて、吸水しやすくなります。これを2〜3回繰り返したら、最後に水ですすぎます。
洗った玄米を、ボウルに移して水を入れます。これまで説明してきた通り、玄米は白米に比べて吸水しにくいため、長時間浸水させる必要があります。中心部まで十分に吸水させるには、5〜6時間ほど浸水させます。寒い冬には、吸水に時間がかかるので、一晩浸水させましょう。気温が高い夏場は、水温の上昇とともに雑菌が増えるので冷蔵庫に入れて浸水させます。理想は10~16時間の浸水、4~5時間に1回位水を取り替えることが望ましい。
浸水が終わったら一度ざるに上げて、新しく水を加えて炊飯します。水の量は玄米の1.5~2倍が目安です。好みによって調整しましょう。
炊飯器の中には、玄米を炊飯する機能「玄米モード」が搭載されている製品があります。玄米モードでは、白米より浸水の工程が長く設定されています。そのため、事前に浸水させずにスイッチを入れて炊くことができます。ただし、玄米モードで炊いてみて、硬いと感じるときには事前に2〜3時間浸水させてから炊きましょう。
なお、玄米モードが搭載されている炊飯器の内釜には目盛りが付いているので、玄米を炊飯するときの水量は「玄米」の線に合わせます。また、製品によって、スイッチを入れてから炊き上がるまでの時間が異なります。説明書を確認しましょう。
最近では、白米と同じように手軽に炊ける玄米が登場しています。「ソフトブラン玄米」は、玄米表面の硬い層に軽く切り込みを入れ、吸水性を高めた玄米です。そのため、洗米や浸水をしないで、炊飯器の内釜の目盛りに合わせて水を入れて「白米モード」で炊くだけで、柔らかい玄米ごはんが炊き上がります。白米と玄米を混ぜて炊くことも可能です。
胚芽やぬか層が残っている玄米は、白米に比べてビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれています。しかし、吸水しにくいため、炊くときには十分に浸水させる必要があります。
最近では、スイッチを入れるだけで玄米が炊ける炊飯器や、洗米や浸水をしないで白米と同じように炊ける玄米が登場しています。これまで炊くのが面倒くさいと思っていた方も、玄米ごはんを始めてみませんか。
(おいしいごはん研究チーム)
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