私たちが普段ごはんとして食べているうるち米には、およそ300品種、産地品種銘柄は900以上あります(令和5年3月31日現在)。その中でも、日本で最も多く作付けされている品種が「コシヒカリ」です。「コシヒカリ」は誕生してから60年以上も経つ古い品種ですが、いまだに人気なのはどうしてなのでしょうか。「コシヒカリ」とはどんなお米なのかを紹介します。
うるち米にはさまざまな銘柄がありますが、その中でも最も作付面積が多いのが「お米の王様」と呼ばれる「コシヒカリ」です。ここでは「コシヒカリ」誕生の歴史や名前の由来について紹介します。
「コシヒカリ」は、第二次世界大戦後中の1944(昭和19)年に、いもち病に強くおいしいお米の品種を作ることを目的として、新潟県農業試験場で「農林1号」を父とし「農林22号」を母として交配が行われました。
いもち病とは稲の病気で、最も被害が大きくなるという、一番怖い病気です。いもち病菌という菌類が寄生する病気で、発生すると葉や穂が菌に侵されて、最悪の場合には枯死(こし)してしまいます。
育成は、戦況悪化のために一度、翌年の栽培が見送られましたが、戦争が終わった1946(昭和21)年に再開されました。1948(昭和23)年に選抜された20株が、福井農事改良実験所に引き継がれ、育成が続けられました。育種の結果、有望な2系統が育成され「越南14号」と「越南17号」の系統名が与えられました。
このうち「越南17号」は適応性試験の結果、茎が弱く倒れやすい、穂首いもちに弱い、未熟粒(青米)が多い、収穫量も多くない、などの欠点がありました。しかし、米質の良さに注目して試験栽培が続けられ、1955年(昭和30)年、新潟県と千葉県の奨励品種となり、翌年の1956(昭和31)年には「農林100号」として登録され、品種「コシヒカリ」が誕生しました。
「コシヒカリ」は、北陸地方の新潟県と福井県の農業試験場で作られた品種です。昔、新潟県や福井県がある地域は越国(こしのくに)と呼ばれていました。「コシヒカリ」という品種名には「越の国に光輝く米」になって欲しいと言う願いが込められています。
「コシヒカリ」は、粘り気と甘みが強く、香りとつやが素晴らしいという特徴があります。
北海道と沖縄県を除く全国で広く栽培されていて、令和4年産の品種別作付比率は33.4%と、全体の1/3を占め第1位の品種です。第2位のひとめぼれの8.5%に大きく差をつけていて「お米の王様」と呼ばれています。
主な産地は、新潟県や茨城県、栃木県です。中でも新潟県の魚沼産の「コシヒカリ」は有名で、日本穀物検定協会が発表する米の食味ランキングでは、2024年3月現在で6年連続で最高の特Aを獲得しています。各産地のコシヒカリで食感や味も異なるので、ぜひお試しください。
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誕生してから60年以上も経った現在でも、最も多く栽培されている優秀な品種の「コシヒカリ」ですが、さらにおいしいお米を生み出そうと「コシヒカリ」を親にしたさまざまな品種が登場しています。
「あきたこまち」は、「コシヒカリ」と病気と寒さに強い「奥羽292号」を交配して誕生した品種です。秋田県雄勝町小野の里に生まれたと伝わる美女「小野小町」にちなんで「あきたこまち」と命名された1984(昭和59)年が誕生日とされています。
主な産地は秋田県、茨城県、岩手県で、令和4年産の品種別作付比率は6.7%で、第4位になっています。ツヤツヤとした透明感があり、香りが良く、冷めてもおいしいのが特徴です。さらに「あきたこまち」からは、「はえぬき」や「つがるロマン」といった品種が作られています。
「ひとめぼれ」は、宮城県古川農業試験場で「コシヒカリ」と寒さへの耐性がある「初星」を交配・育成をして、1991(平成3)年に誕生したお米です。見た目の美しさとおいしさに“ひとめぼれ”してしまうというのが名前の由来です。
令和4年産の品種別作付比率は8.5%で、コシヒカリに次いで第2位、主な産地は宮城県、岩手県、福島県です。つや、粘り、うまみのバランスが良く、和洋中さまざまな料理に合います。さらに「ひとめぼれ」からは「金色の風」や「こしいぶき」といった品種が作られています。
「ヒノヒカリ」は、「コシヒカリ」と「黄金晴」を交配して誕生した品種です。宮崎県総合農業試験場で育成されました。「ヒノヒカリ」として命名登録されたのは1989(平成元)年です。名前は、ヒ(日)は西日本や九州を表しており、ヒカリ(光)はお米が光り輝くことから名付けられました。
令和4年産の品種別作付比率は8.1%で第3位、主な産地は熊本県、大分県、鹿児島県で西日本を中心に栽培されています。粘りや香り、旨味のバランスが良いのが特徴です。
「コシヒカリ」は、北海道と沖縄を除く、全国で広く栽培されているうるち米です。新潟県の魚沼産が有名ですが、同じ「コシヒカリ」であっても産地ごとに土・水・気候が異なるため、食味や食感にも違いがあります。ぜひ、いろいろな産地の「コシヒカリ」を食べ比べしてみてください。
(おいしいごはん研究チーム)
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