古くから私たちの食卓でなじみのある「おにぎり」。1954年創業の東京で最も古いおにぎり屋とされる「おにぎり浅草宿六」さんでは、どのようなおにぎりを提供しているのでしょうか。ごはん彩々の前回の記事(「おにぎり」の パワーと魅力を探る)以来、さらに注目を集めている宿六さんに、お米へのこだわりや、おにぎりの魅力などを、三代目店主の三浦洋介さんにうかがいました。
――まずは、お米の銘柄はどのように選んでいるのか、教えてください。
(三浦さん) 毎年、新米が出たタイミングで必ず複数銘柄を試食して、おいしいなと思ったものに決めています。今年使っているのは、新潟県のコシヒカリです。よく、「おにぎりに合う銘柄を教えてください」という質問を受けるけど、答えることはできない。なぜって、おにぎりに合うかどうか、おいしいと思うかどうかは、人によって千差万別でしょ。「正解」というものは存在しない。私も、自分が家庭で食べてきた味で「おいしい」と思うものを再現しているに過ぎないからね。なので、どの銘柄がおにぎりに合うか、なんて考えずに、好きな銘柄があるのであれば、素直にそれを使ったらいいと思います。
――続いて、お米の炊き方はどのようにされていますか。
(三浦さん)使用しているのは羽釜。1日に1.5升を昼と夜に2回ずつの合計4回炊きます。羽釜で炊くことは、創業当時から変わっていません。劣化したら買い換えますが、同じものを大体10年くらいは使います。火加減を微調整する必要はありますが、羽釜は特別なことをしなくとも、ご飯をおいしく炊き上げてくれる。
(三浦さん) 当店では、「毎日きっちり同じものを提供しよう」とは、はなから考えていない。機械が作るのとは違って、人の手で作るんだから、バラつきがあってしかるべきでしょう。常連の方も多いから、お客様を飽きさせないという意味でも、日々多少の変化はあった方がいいんじゃないかな。
―― おいしいおにぎりの条件はどのようなことだと思いますか。
(三浦さん) 先ほども話した通り、おいしいかどうかは一人一人が決めること。「これが条件だ!」なんて言うのは、自分の好みを押し付けることになる。だから「こうすれば絶対においしい」というルールはないよね。おいしいと思えるのは、やはり自分が食べて育った「家庭の味」じゃないかと思う。私自身、母親が作ってくれたおにぎりがおいしいと思ったからこそ、それを自分なりに再現して提供しているのであって。母親の味に近付けるには、何度も試行錯誤して練習しました。
―― 一般のご家庭でもできる、三浦さんが提供するおにぎり作りで実践されていることを教えてください。
(三浦さん) そうだな~、しいて言うのなら「握りすぎない」ってことかな。おにぎり=三角形、というイメージを抱いている方も多いと思うけれど、本来おにぎりはワンハンド(片手)で食べられればいいわけです。極端に言えば、形はどうであれ、まとまっていればOKなんだよね。三角形にする場合は、握る回数は3回まで!
―― 創業以来、おにぎり一筋のお店でお客様から支持され続けている理由は、どのようなことだと思いますか。
(三浦さん) それはお客様に聞いてみないと分からないけど(笑)。常連のお客様を飽きさせないように、ちょっとずつの変化を持たせるようにしています。例えば、塩。具によっても、合う塩は異なりますから。
―― 最後に、三浦さんから見たおにぎりの魅力について、お話しいただけますか。
(三浦さん) おにぎりは、本当に懐の大きい料理なんだよね。梅や昆布はサンドイッチに入れないけれど、おにぎりの具にはなるでしょ。パンに合わない具でも、ご飯には合うんだよ。しかも、タコスの具、北京ダック、ガパオライスなど、各国の代表的な料理を具材として入れるだけで、簡単にローカライズできる。以前とあるイベントで、ワインで炊いたご飯にチーズやオリーブ、生ハムを入れたイタリアンおにぎりを作ったんだけど、イタリアの方々に好評だったなぁ。その土地で馴染みのある素材を使って具にすることで、その土地の味になる。和食の中でも、無限の可能性を秘めた料理はおにぎりをおいて他にないと思う。「おにぎりとはこうあるものだ」という考えをいったん離れて、好きな具材でもっと楽しんでほしい。そして、おにぎりの知名度が、世界的にもっと上がっていくといいなと思います。
「おにぎり浅草宿六」さんの握り方を動画でご紹介します!
おにぎり浅草宿六
■営業時間
11:30~ 18:00~(ご飯がなくなり次第終了)
■定休
昼の部:日曜日
夜の部:火曜日と水曜日
■電話番号
03-3874-1615
■住所
東京都台東区浅草3-9-10
浅草寺本堂の裏手、言問通り沿い
千束通り(ひさご通り)入り口と雷5656会館の中間にあります
■席数
カウンター8席 テーブル2卓8席(全席禁煙)
■お知らせ
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