「はじめちょろちょろ、中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな」という、美味しいお米の炊き方のコツを表した言葉があります。この「赤子泣いてもふた取るな」という部分が示しているように、ごはんを美味しく炊き上げるためには蒸らしの工程が重要です。
そこで、今回はなぜごはんを炊くときに蒸らしの工程が必要なのかについて解説します。
ごはんを炊くとき、なぜ蒸らすというひと手間が必要なのでしょうか。まずは、その理由を見ていきましょう。
炊きあがったごはんは、フタをしたまま十分に蒸らすと美味しくなります。炊いてすぐのごはんはべちゃべちゃとして水分が多い状態なのですが、蒸らすことでごはん粒に含まれる水分が均一になり、美味しいごはんへと炊きあがるのです。
一方で、蒸らしが不十分だと、水っぽくて美味しくないごはんになってしまうことも。蒸らし加減でも味が変わってくるので、ぜひお好みの蒸らし加減を探してみましょう。
炊きあがったとき、水分はまだ蒸気として釜の中の空間にある状態ですが、しっかり蒸らしてあげることで、蒸気として存在していた水分がお米の一粒一粒に吸収されます。すると、お米の細胞がふくらんでハリが出るため、表面がもっちりと粘り気が生まれてくるというわけです。
釜の中は火を止めたときの高温のまま蒸らすことで、蒸気が冷えて水滴になることなくスムーズにごはんに吸収されます。実際に、火を止めた直後のごはんと十分に蒸らした後のごはんを比べると、蒸らした後のごはんはふっくらとして見た目にもツヤツヤと美味しそうに見えるでしょう。炊飯器によっては、粘り気をうまく作る機能が付いたものもあるほど、粘り気は美味しさに重要な役割を果たしています。
このように、ごはんを炊くときに蒸らしは必須ですが、炊飯器の場合は炊きあがった後に意識的に蒸らさなくて良いものもあります。
ガス炊飯器、IH炊飯器、マイコン炊飯器など、自動炊飯器のほとんどはあらかじめ炊飯時間に蒸らし時間がプログラムされているため、炊き上がりの音はすぐに食べられるという合図です。わざわざその後、時間をとってさらに蒸らす必要はありません。ご自宅の炊飯器が蒸らし機能つきかどうかは、取扱説明書を確認してみましょう。
炊飯器に蒸らし機能がない場合は、蒸らしが必要です。スイッチが切れた後、フタをとらずそのまま10〜15分間置いておきましょう。蒸らしすぎるとごはんが締まってしまうので、蒸らしすぎには注意が必要です。蒸らした後、フタを開けてツヤツヤ、ふっくらしていれば美味しく炊けていると判断して良いでしょう。
土鍋でごはんを炊くときにも、もちろん蒸らしは必要です。火を止めた後、10分程度蒸らしてから食べましょう。とはいえ、釜や炊飯器とは保温性や熱伝導率が違うので、それぞれに適した炊き方・蒸らし方をする必要があります。
特に、炊飯用の土鍋でない場合、密閉度が低いことがあるので、土鍋の穴を箸でふさいだり、土鍋のふちに濡れ布巾を巻きつけておいたりすると密閉度や圧力が高まり、美味しく炊けるでしょう。
炊きあがったごはんはすぐ食べたくなってしまうものですが、最後にごはんを混ぜてひっくり返す「ほぐし」も忘れないようにしましょう。蒸らし終わったら、すぐにほぐすのがポイント。余分な水分を飛ばし、炊きムラをならしてより美味しく食べられます。
反対に、ごはんをほぐさないまま時間が経ってしまうと、デンプンが固まってせっかくのごはんが固く、食感も悪くなって台無しになってしまうので、気をつけましょう。
【ほぐし方】
・釜の中のごはんを十字に切り、底の方から1/4ずつひっくり返す
・ごはん粒を潰さないよう気をつけながら、蒸気を逃がしつつ空気を含ませる
このひと手間で、ごはんの粒表面がはっきりして粒感のある美味しいごはんに仕上がります。ぜひ、蒸らし終わったらほぐしのひと手間を忘れないでください。
蒸らしている途中でフタを開けるのは厳禁です。また、よくほぐせる量は5.5合炊きの炊飯器で3合程度がベスト。それ以上の量で炊くと下の方がよくほぐせなかったり、ひっくり返したときにごはんの重さで潰れてしまったりします。これらの点に注意して、美味しいごはんを食べましょう。
ごはんを美味しく炊くには、蒸らしの工程が欠かせません。しかし、家庭用炊飯器の多くは蒸らし機能がついているので、取扱説明書を確認しましょう。蒸らし終わったら混ぜてひっくり返すと、より美味しく食べられます。
ごはんの炊き方については、こちらで詳しく解説しています。
彩々炊飯術 炊飯器編
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