日本人の主食であるお米は、古くから大量に、かつ安全に美味しく作るためのさまざまな工夫がなされてきました。近年では品種改良や機械化、手法の整備など、さらに美味しく、安全で質の良いお米を作るための取り組みが行われています。今回は、米作りで稲作農家が行っているさまざまな工夫や取り組みについて見ていきましょう。
※苦土石灰(くどせっかい):土のアルカリ性を増すために使われる、白色の粉末状もしくは粒状の肥料
次に、稲に必要な栄養素を十分に補給するため、不足している栄養素を中心に元肥を施します。加えて、有機肥料で、有益な微生物(バクテリア)が住みやすい環境も整える必要があります。
肥料について詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
「稲作に必要な肥料とは?基肥・追肥の与え方や過不足による影響も解説」
また、水はけの良さは大切ですが、良すぎても肥料や水分を保てません。水はけが良すぎたら、粘土を加えて適度な水はけに調整します。もともと粘土質すぎる場合は掘り起こすだけで大変なので、そもそも使わないことが多いです。
例)パイプ灌漑:地下にパイプをめぐらし、河川の上流にある取入口から直接田んぼに入る。田んぼ1枚1枚に対し、水道の蛇口がついている。必要なときに必要なだけ水やりができる
また、田んぼの水がもれないよう、周囲には畦(あぜ)という土手のようなものを作ります。生育のためには水を入れたり抜いたりする過程が必要なので、水の整備は特に重要です。
農業機械については、こちらの記事もぜひ読んでみてください。
「米作りに必要な道具・機械とは?昔はどんな道具を使っていたの?」
・早生品種(わせひんしゅ):実りが早い
・晩生品種(ばんせいひんしゅ):実りが遅い
・中生品種(ちゅうせいひんしゅ):実りが早生品種と晩生品種の中間
◯合鴨農法:水田に合鴨を放し飼いにする。害虫や雑草を食べてくれ、フンが有機肥料に
◯有機肥料の見直し:稲作農家と畜産農家が協力し、ワラと家畜のフンを発酵させて質の良い「堆肥」を作る取り組みなど
○コイ農法:鯉が田んぼを泳ぎ回ることで、泥がかき回されて雑草の生育・発芽を抑え、除草効果を得る
○レンゲ栽培農法:秋に田んぼにレンゲの種をまき、冬の間に育て、春に花を咲かせたレンゲを土に鋤き込んで肥料にする。レンゲは空気中の窒素を取り込んで根に溜め込むので、窒素肥料の代わりになる
○海藻リキッド農法:海藻のミネラルで葉緑素を増やし、保湿力を高めて気温や空気の影響を和らげ、作物の鮮度を保ちやすくする
また、こだわりのある生産者は、これ以外にも独自の農法や栽培方法で、できるだけ農薬を使用しないでお米を栽培しています。ここでは、その一部を紹介しました。
寒暖の差が大きい環境に加え、最上川から流れる冷たく清らかな伏流水を使用。さらに、乾燥は「はざかけ」という昔ながらの方法で手間暇かけて行っています。
作っているのはJAS有機米、特別栽培米(農薬化学肥料不使用)、特別栽培米(農薬化学肥料7割減で除草剤1回使用)の3種類。中でも、JAS有機米は農薬や化学肥料不使用農場での栽培を2年以上継続し、工程表や投入資材の一覧を提出するなど、非常に高い品質が求められる農法です。
遠藤五一さんのインタビュー記事はこちら
「米作りの匠「遠藤五一」さんに聞く」
(おいしいごはん研究チーム)
お米を安定してたくさん収穫するための工夫とは?
お米を安定してたくさん収穫するためには、どんな工夫がされているのでしょうか。まずは、日本中に豊かな食料を供給するために行われている生産の工夫から見ていきましょう。
健康で丈夫な稲を育てる「土づくり」
1つ1つの田んぼによって土が違い、毎年の天気が違うので、それに合わせた土づくりが必要です。特に、雨の多い日本では酸性の土壌になりやすく、根が傷んだり養分吸収を妨げたりしてしまうことも。この場合は、苦土石灰(くどせっかい)を撒くなどして土壌の酸度を調整します。※苦土石灰(くどせっかい):土のアルカリ性を増すために使われる、白色の粉末状もしくは粒状の肥料
次に、稲に必要な栄養素を十分に補給するため、不足している栄養素を中心に元肥を施します。加えて、有機肥料で、有益な微生物(バクテリア)が住みやすい環境も整える必要があります。
肥料について詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。
「稲作に必要な肥料とは?基肥・追肥の与え方や過不足による影響も解説」
また、水はけの良さは大切ですが、良すぎても肥料や水分を保てません。水はけが良すぎたら、粘土を加えて適度な水はけに調整します。もともと粘土質すぎる場合は掘り起こすだけで大変なので、そもそも使わないことが多いです。
稲の成長に欠かせない「水の整備」
清浄な水をいつでも必要なときに田んぼに入れるため、水の整備を行います。田畑への水やりのことを灌漑(かんがい)と言い、稲に対する灌漑は「水田灌漑」とも呼ばれます。例)パイプ灌漑:地下にパイプをめぐらし、河川の上流にある取入口から直接田んぼに入る。田んぼ1枚1枚に対し、水道の蛇口がついている。必要なときに必要なだけ水やりができる
また、田んぼの水がもれないよう、周囲には畦(あぜ)という土手のようなものを作ります。生育のためには水を入れたり抜いたりする過程が必要なので、水の整備は特に重要です。
農業機械を使った作業がしやすくなる「区画整理」
トラクターなど、大きな農業機械を使った作業がしやすいよう、田んぼの区画整理を行います。昔は10アールを1単位としていましたが、やがて30アールが基本となり、今では1ヘクタール以上の田んぼも存在するほど。大型機械は使いやすく時間短縮になって作業効率が良い反面、高価なので数軒の農家が共同で購入することもあります。農業機械については、こちらの記事もぜひ読んでみてください。
「米作りに必要な道具・機械とは?昔はどんな道具を使っていたの?」
土地や消費者のニーズに合う「品種選び」
土地や気候に合わせた丈夫で収量の多い生産性の高い品種、消費者が好む美味しい品種など、さまざまな観点から選ばれます。そのための品種改良が行われることもありますが、田植え・収穫・乾燥などの作業が一度にならないよう、時期をずらして以下のような品種をバランスよく栽培するのが一般的です。・早生品種(わせひんしゅ):実りが早い
・晩生品種(ばんせいひんしゅ):実りが遅い
・中生品種(ちゅうせいひんしゅ):実りが早生品種と晩生品種の中間
美味しいお米を作るための工夫とは?
では、お米の生産から一歩進んで「美味しいお米」を作るためにはどのような工夫が行われるのでしょうか。
昔ながらの方法で行う「はざかけ」
田んぼに杭を立て、刈り取った稲穂を吊るして天日干しする方法です。機械乾燥よりも時間はかかるのですが、干している間にも熟していくためより美味しくなるとされています。
手間ひまかけて美味しく作る「無農薬・減農薬農法」
農薬や化学肥料はお米の安定した生産を助け、病害虫から守る大量生産に向いています。もちろん、用法・用量を守れば安全ですが、農薬や化学肥料を使わない昔ながらの農法が美味しいという意見もあるため、以下のような農法でできるだけ農薬を使わず作られることもあります。◯合鴨農法:水田に合鴨を放し飼いにする。害虫や雑草を食べてくれ、フンが有機肥料に
◯有機肥料の見直し:稲作農家と畜産農家が協力し、ワラと家畜のフンを発酵させて質の良い「堆肥」を作る取り組みなど
○コイ農法:鯉が田んぼを泳ぎ回ることで、泥がかき回されて雑草の生育・発芽を抑え、除草効果を得る
○レンゲ栽培農法:秋に田んぼにレンゲの種をまき、冬の間に育て、春に花を咲かせたレンゲを土に鋤き込んで肥料にする。レンゲは空気中の窒素を取り込んで根に溜め込むので、窒素肥料の代わりになる
○海藻リキッド農法:海藻のミネラルで葉緑素を増やし、保湿力を高めて気温や空気の影響を和らげ、作物の鮮度を保ちやすくする
また、こだわりのある生産者は、これ以外にも独自の農法や栽培方法で、できるだけ農薬を使用しないでお米を栽培しています。ここでは、その一部を紹介しました。
米作りの匠「遠藤五一」さんのこだわり
米・食味分析鑑定コンクールで4年連続金賞を受賞し、日本一美味しいお米を作る生産者として有名な遠藤五一さん。スタジオジブリの映画「おもひでぽろぽろ」のトシオ役のモデルの一人となったことでも有名で、有機農業発祥の地とされる山形県高畠町で米作りを行っています。寒暖の差が大きい環境に加え、最上川から流れる冷たく清らかな伏流水を使用。さらに、乾燥は「はざかけ」という昔ながらの方法で手間暇かけて行っています。
作っているのはJAS有機米、特別栽培米(農薬化学肥料不使用)、特別栽培米(農薬化学肥料7割減で除草剤1回使用)の3種類。中でも、JAS有機米は農薬や化学肥料不使用農場での栽培を2年以上継続し、工程表や投入資材の一覧を提出するなど、非常に高い品質が求められる農法です。
遠藤五一さんのインタビュー記事はこちら
「米作りの匠「遠藤五一」さんに聞く」
まとめ
日本で古くから行われてきた米作りは、その手法や工夫もさまざまです。丈夫で質の良い稲を作るための土作りや水の整備、生産効率を高めるための機械化や品種選びなど、各農家がそれぞれの田んぼや気候、ニーズに合わせた工夫をしています。ぜひ、工夫を凝らした美味しいお米を味わってみてください。(おいしいごはん研究チーム)
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