お米を育てる場所は田んぼ(水田)ですが、田んぼの水が稲の生育状況に応じて細かく管理されていることはご存じでしょうか。稲を育てるために、なぜ水田で細かく水の管理をする必要があるのか、その理由や工程ごとの詳しい管理方法についてご紹介します。
これは、稲は他の作物と異なり、根から茎・葉までしっかりと空気を通せる組織が発達していること、根から酸素を逃がさないようにするバリアがあり、根が酸欠状態になっても茎や葉から吸収した酸素を根まで送れることが関係しているのです。他にも、田んぼに水を張ると以下のメリットがあります。
・土中に酸素がなくなるので、多くの雑草の種子が呼吸できず、発芽できない=雑草が生えにくい
・稲につく病害虫も水を張ってあると住みづらいので、病害虫にかかりにくくなる
・連作障害を起こしにくくなり、毎年同じ田んぼで稲を作れる
・熱帯で生まれた稲は気温が低くなると育ちが悪くなったり、穂が作れなくなったりする冷害の被害を受けやすいが、水が張ってあると気温が下がりにくく、冷害の被害を受けにくくなる
とはいえ、稲の根も生育期にはやはり多くの酸素が必要です。田んぼにずっと水を貯めっぱなしにしておくより、必要に応じて水を抜いた方が育ちやすいのです。そこで、稲作においては細かい水管理が重要となります。
お米づくりの全工程については「意外と知らない米作り方法!?6つの行程について詳しく解説」の記事も参考にしてください。
種もみから幼芽と幼根が出たら、「苗代」で苗になるまで育てていきます。苗代は基本的にトンネル内で一定の環境で育てるのですが、「緑化」と「硬化」の行程が必要です。
緑化:出芽した苗を日光や気温に慣らすため、芽が出揃ったら弱い光に2〜3日当てる
硬化:緑化した苗を低温に慣らすため、苗代をトンネルに入れたまま自然環境に慣らしながら管理する
育苗中、水は床面にかかるかかからないか程度を保ち、冠水しないように注意します。田植えの1週間くらい前にトンネルを外し、種まきから1ヶ月後ぐらいで植え付けです。
中干しでは、酸素が少なくなった土壌から発生する有毒ガスを抜くほか、土に酸素を供給して健全な根の生長を促します。水をなくすことで窒素の吸収を抑え、無効分げつという穂のつかない茎の発生を抑える効果も。 つまり、中干しは根をしっかり育て、秋に実る稲穂を支えられるよう育てて収量を上げるために重要な工程と言えるでしょう。
開花が終わったら、登熟期となり再び「間断かんがい」でお米粒をしっかり育てていきます。
稲作において水管理が必要なのはなぜ?
稲には「水稲(水の多い環境に適した稲)」と「陸稲(水の少ない畑に適した稲)」の2種類がありますが、普段我々が主食として食べている「うるち米」はほとんどが水稲です。特に、一般的な小麦などの作物は水に浸けて育てると根が呼吸できなくなり、腐ってしまうのですが、水稲の根は逆に水に浸さないと吸水力が弱く、枯れてしまいます。これは、稲は他の作物と異なり、根から茎・葉までしっかりと空気を通せる組織が発達していること、根から酸素を逃がさないようにするバリアがあり、根が酸欠状態になっても茎や葉から吸収した酸素を根まで送れることが関係しているのです。他にも、田んぼに水を張ると以下のメリットがあります。
・土中に酸素がなくなるので、多くの雑草の種子が呼吸できず、発芽できない=雑草が生えにくい
・稲につく病害虫も水を張ってあると住みづらいので、病害虫にかかりにくくなる
・連作障害を起こしにくくなり、毎年同じ田んぼで稲を作れる
・熱帯で生まれた稲は気温が低くなると育ちが悪くなったり、穂が作れなくなったりする冷害の被害を受けやすいが、水が張ってあると気温が下がりにくく、冷害の被害を受けにくくなる
とはいえ、稲の根も生育期にはやはり多くの酸素が必要です。田んぼにずっと水を貯めっぱなしにしておくより、必要に応じて水を抜いた方が育ちやすいのです。そこで、稲作においては細かい水管理が重要となります。
お米づくりの全工程については「意外と知らない米作り方法!?6つの行程について詳しく解説」の記事も参考にしてください。
稲作の水管理、5工程をまるごと紹介
では、稲作における水管理の5工程をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
稲作の水管理①:種もみ〜育苗期
稲の水管理は、種もみを収穫後、選別して消毒した後から始まります。種もみを水に浸け、水分含有量が乾いたもみの重さの約25%以上になるよう十分に水を吸わせていくのです。水温は10〜15℃、日数は「水温×日数(積算温度)=100」を目安として決めます。種もみから幼芽と幼根が出たら、「苗代」で苗になるまで育てていきます。苗代は基本的にトンネル内で一定の環境で育てるのですが、「緑化」と「硬化」の行程が必要です。
緑化:出芽した苗を日光や気温に慣らすため、芽が出揃ったら弱い光に2〜3日当てる
硬化:緑化した苗を低温に慣らすため、苗代をトンネルに入れたまま自然環境に慣らしながら管理する
育苗中、水は床面にかかるかかからないか程度を保ち、冠水しないように注意します。田植えの1週間くらい前にトンネルを外し、種まきから1ヶ月後ぐらいで植え付けです。
稲作の水管理②:植え付け〜最高分げつ期
稲を水田に植え付けたら、活着する(きちんと根づく)までは苗が水没しない約5〜7cmの水深とし、水の保温効果で苗を保護します。その後、徐々に分げつを出して茎を増やしていく「分げつ期」に入り、活発に生育を始めたらやや水量を減らし、約2〜4cmの水深にして地温を上げ、分げつの発生を促します。 水の深さから、初めが「深水管理」、次を「浅水管理」とも呼ばれています。
稲作の水管理③:最高分げつ期〜中干し
幼穂が作られるころに最高分げつ期となり、分げつの発生は終わり、茎が伸び始めます。この頃、あえて田んぼから水を抜き、土の表面に亀裂が出るまで7〜10日ほど干す「中干し」を行わなくてはなりません。 中干しでは、酸素が少なくなった土壌から発生する有毒ガスを抜くほか、土に酸素を供給して健全な根の生長を促します。水をなくすことで窒素の吸収を抑え、無効分げつという穂のつかない茎の発生を抑える効果も。 つまり、中干しは根をしっかり育て、秋に実る稲穂を支えられるよう育てて収量を上げるために重要な工程と言えるでしょう。
稲作の水管理④:出穂期
中干しが終わったら、水を入れる工程(湛水)と水を抜く工程(落水)を数日ごとに繰り返す「間断かんがい」を行います。これは、水分の供給と酸素の供給を交互に行うことで、さらに根をしっかり育てるためです。 出穂〜開花期は、開花・受粉・受精が正常に起こらなくてはならないので、最初にもご紹介した「浅水管理」を行います。開花が終わったら、登熟期となり再び「間断かんがい」でお米粒をしっかり育てていきます。
稲作の水管理⑤:落水
収穫前1〜2週間程度を目安とし、最後の「落水」を行います。落水は遅ければ遅いほど良いと考えられているのですが、収穫作業までに土が乾ききっていないとコンバインなどの大型機械で作業しにくくなるので、時期の見極めが大切です。
まとめ
稲(水稲)は他の作物と異なり、水の多い環境でこそ育ちやすい作物です。病害虫や雑草の発生を抑えるためにも、温度を保つにも水田は良い効果をもたらします。苗を育てるところから収穫直前まで、細かい水管理が行われることで、美味しいお米が食べられるのです。
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